人手不足の対処方法とは
人手不足の時代の生き残り方法
中小企業が人手不足に対処していくためには、労働投入量を節約するという工夫に加え、人材育成・能力開発を通じて個々の従業員が生み出す付加価値を向上させていくことが求められます。
「中小企業白書2018年版」において、企業がOJTとOFF-JTのいずれを重視しているかに言及されています。
厚生労働省「平成28年度能力開発基本調査」のデータを用いて企業規模別に整理した結果をみると、企業規模を問わず「OJTを重視する」、「OJTを重視するに近い」の回答が大半を占めており、企業側がOJTを重視していることが示唆されています。
一方で、「OFF-JTを重視するに近い」、「OFF-JT を重視する」と回答した割合の合計は企業規模を問わず20%を超えており、OFF-JT を重視する企業が一定数存在することがみてとれます。
企業側が実施したOFF-JTの内容についてみると「新規採用者など初任層を対象とする研修」が、企業規模を問わず最も高い回答割合となっており、かつ規模が大きくなるほどその割合が高くなっています。
指導できる人材も不足
人材育成・能力開発を行うにあたっての課題を企業規模別に整理した結果をみると、企業規模を問わず「指導を行う人材が不足している」といった教える側の人材不足に関する回答割合が最も高くなっており、かつ規模が大きくなるほどその割合が高くなっています。
一方で規模が小さくなるほど、「鍛えがいのある人材が集まらない」といった、教えられる側の人材不足の課題を抱えている企業の割合が高くなっています。このように中小企業における人材育成といっても企業規模によってその課題に違いがみられるのです。
外部を巻き込んだ事例
中小企業において、具体的にどのような人材育成の取り組みがみられるのでしょうか。そこで「中小企業白書2018年版」において、外部機関等も活用しつつ計画的な人材育成を行い従業員の能力向上に取り組んでいる企業の事例とした紹介された、株式会社サニカ(本社:山梨県南アルプス市、従業員数175名)の事例についてみていきましょう。
株式会社サニカは、駐車場システム機器及びメカトロニクス機器等の開発・生産を行っている企業です。同社の研修体系は、これまで主任研修や課長研修といった階層別研修に加え、OJTと自己啓発支援が中心でしたが、人手不足が深刻化する中、これまで以上に個々の従業員の能力・技術向上が必要との認識に至りました。
そこで、社内の各部門の業務に必要な能力、技術、資格を洗い出し、それらを証明するための技能・資格制度をリストアップしました。これを「社内認定資格制度」とし、当該リストの技能・資格制度に必要な受験手数料や学習講座の受講料を会社が費用負担することとしました。
また、階層別の研修は、自社内で研修プログラムを準備することが難しいため、外部機関の人材育成カリキュラムを利用しており、毎年複数人を計画的に外部研修に参加させています。外部研修は日数の制約がある一方で、受講者がどのような知識が欠けているのかを把握できるとともに、同じ立場の受講者と一緒に研修を受けることで、良い刺激となるなどの効果もみられるとのことです。
このように中小企業の人材育成においては、教え手側の人材不足という課題を克服する意味でも、外部機関等を活用した取り組みと自社の取り組みとをうまく組み合わせることが求められるのです。